現在、法務省は今期の国会に民法の改正案を提出する方針です。改正案には自筆証書遺言制度の見直しが含まれています。自筆証書遺言について、現行制度の問題点と改正案を解説します。

1.現行制度の問題点

自筆証書遺言は、遺言者本人が全文を手書きで作成する遺言です。費用をかけずに作成できますが、以下の問題点があります。
  1. 他者の代書、パソコンでの作成が認められていないため、すべて遺言者が手書きしなければならない。
  2. 作成日、氏名の記載漏れ、押印漏れによる形式不備の可能性がある。
  3. 遺言書の紛失や破棄、偽造される可能性がある。
  4. 相続の際には、家庭裁判所による検認手続きが必要になる。

2.改正ポイント①「作成方式の緩和」


遺言書の『本文』は遺言者が手書きし、自署押印が必要ですが、『財産目録』を別紙として添付する場合には、別紙目録は他人が作成したものでも、余白に遺言者が自署押印すれば有効です。パソコンで作成して自署押印したものもOKです。

別紙目録は必ずしも文書形式でなくても構いません。不動産であれば全部事項証明書、預貯金であれば通帳の表紙のコピー(金融機関、支店名、預金種類、口座番号、口座名義がわかる部分)なども別紙目録として利用できます。

遺言書本文(すべて自書しなくてはならない)


別紙1(署名部分以外はパソコンでOK)


別紙2(全部事項証明書でも「別紙2」と記入し、署名押印すればOK)

3.改正ポイント②「法務局での保管」


改正案では、法務局に自筆証書遺言を保管してもらう仕組みができることになっています。法務局に保管してもらう場合には、手続きのために遺言者自身が法務局に足を運ぶ必要がありますが、手続きの際に法務局の事務官が、本文が遺言者の手書きになっているか、自署押印がなされているかなど、遺言書が有効な形式になっているかを確認してくれることになっています。

保管された遺言書は、遺言者が生存中は、遺言者自身のみ返還、閲覧、コピーの交付請求を行うことができます。紛失などのリスクがなくなり、遺言書の存在を家族にも秘密にできます。

遺言者が亡くなった場合には、相続人は法務局に遺言書が保管されていないかを確認する申請ができます。遺言書が保管されている場合には、すべての相続人、受遺者、遺言執行者に遺言書が保管されている旨の通知が法務局から届きます。よって、法務局に保管されていた遺言書については、家庭裁判所の検認手続きが不要になります。

また、遺言書は法務局にて電子画像データとしても保管されるため、相続人等はどこの法務局からでも遺言書の謄本を取得することができます。


本ページに掲載した画像は情報サイト相続.co.jp様より転載許可を得て掲載しています。