相続の限定承認って?


相続が開始した場合,相続人は次の三つの相続の方法のうち、いずれかを選択できます。

  1. 相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認
  2. 相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄
  3. 被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認
相続人が、2の相続放棄または3の限定承認をするには,家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません(裁判所HPより)。

相続の限定承認は、被相続人の資産や負債がわからない時に使われることが多いです。
両親が離婚しており、生前ほぼ会うことのなかった方の親の死を知ったときや、遠方に住む、子供のないおじやおばの相続人になるケースが考えられます。

手続きは?


家庭裁判所に対して、相続人全員が共同して手続きを行う必要があります。
相続放棄と違って、一人一人でめいめい手続きをすることが出来ず、相続人が複数いる場合は相続人全員が共同して行う必要があります。

相続人のうち一人は普通の相続(単純承認といいます)、別の一人は限定承認といったことは出来ず、限定承認をする場合は全員が共同して限定承認をしなければ、家庭裁判所に受理してもらうことができません。

メリットと注意するべきポイント


相続放棄と違い、被相続人の資産と負債を調査し、相殺した結果プラスの財産が残る場合はそれを受け取ることができるのがメリットといえるでしょう。被相続人所有の財産の中に居住用家屋が含まれている場合、競売で買い戻すことにより住んでいる家を手放さずに済むこともできます。

ただし被相続人が土地を所有している場合は注意が必要です。
限定承認に係る土地は被相続人が時価で譲渡したものとみなされ、準確定申告で譲渡所得税を納めなくてはならないケースもあるからです。

具体例


相続財産の中に被相続人が10年前に2,000万円で取得し、相続開始時点で3,000万円に値上がりしている土地があったとします。
この場合、時価で譲渡があったものとみなされますので
(3,000万円-2,000万円)×20.315%=203万1500円
の長期譲渡所得税・住民税がかかります。

もしこの土地が相続開始年5年以内に被相続人が取得したものであった場合は
(3,000万円-2,000万円)×35.63%=356万3000円
の短期譲渡所得税・住民税がかかることになります。

また、先祖伝来の土地などで取得価額がわからない(証明するものがない、大昔の値段なので非常に安い場合など)ときは、取得価額は譲渡対価の5%を計上するので(3,000万円-150万円)×20.315%=578万9775円
の長期譲渡所得税・住民税がかかります。

もしこの被相続人にこの土地以外の財産債務がほとんどなく、相続税の基礎控除額以下であるような場合、単純承認であれば相続税も所得税もかからなかったのに、限定承認を選択してしまったがゆえに上記の所得税を納めなければいけないということになります。
反対に被相続人に土地の価額を上回るような多額の債務があるような場合には限定承認が有利だといえます。

相続の限定承認、相続放棄は原則として相続の開始があった日から3ヶ月以内に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申述をしなければ適用されません(延長することもできますが、手続きが必要です)。

3ヶ月で被相続人の財産を確定し、単純承認、限定承認、相続放棄のどの方法が有利かを判断し、仮に限定承認が有利だと判断した場合でも相続人全員で限定承認の申述をするという合意を形成し実際に申述を行うというのは非常にタイトなスケジュールであると言えるでしょう。

また、その後裁判所から出頭を求められることがあったり、相続財産の清算手続きが必要になってきますが、一般の個人だけでこのような事態に対処するのは困難で、弁護士や司法書士、税理士の関与が必要になってくることが多いです。
実際にこのようなケースに遭遇した時は、一刻も早く専門家の相談したほうがよいです。

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