賃貸用共同住宅には、駐車場が併設されているケースがほとんどですが、この駐車場の評価については、利用状況により貸家建付地評価ができる場合と、貸家建付地が認められず更地評価となる場合があります。
貸家建付地と認められるときは共同住宅と一体で評価できるので、面積が500㎡(地域によっては1,000㎡)を超えれば「地積規模の大きな宅地」として評価の適用の可能性が高くなりますが、更地評価になるということは評価単位も別々になるので、「地積規模の大きな宅地」としての評価減が使えなくなると、全体として評価がかなり高くなってしまいます。
貸家建付地として認められるためにはどのような対策があるのか、検討したいと思います。

1.賃貸共同住宅の敷地に併設された入居者専用駐車場の場合

賃貸用共同住宅と貸駐車場に一体性が認められるため全体を貸家建付地として評価できる。

裁決事例(国税不服審判所(東裁(諸)平22第112号)
貸駐車場は、通常、家屋を利用する範囲で使用することが必要な部分とは認められないから、原則として自用地で評価すべきである。
ただし、貸家の敷地内に併設された駐車場であって、かつ、駐車場の契約者及び利用者がすべて貸家の賃借人であり、駐車場が貸家入居者専用の駐車場として使用されているなど、駐車場の貸付の状況が貸家の賃貸借と一体となっていると認められるような場合には、当該駐車場は、家屋と一体として利用されているものと認められるから、全体を貸家建付地として評価することができるものと解するのが相当である。

2.貸家建物と貸駐車場の利用が一体的利用と認められない場合

国税不服審判所は、貸家の付属駐車場の一部を共同住宅の入居者以外の者が契約し、利用した場合、入居者専用の駐車場という貸家建物との一体的な利用が認められない、付属駐車場を自用地評価すると判断しました。

入居者のみで付属駐車場が埋まらないため、外部から賃借人を募集して駐車場を埋めることが一般的に行われていますが、そのような場には、建物付属駐車場はその全体が自用地評価となってしまいます。



3.共同住宅の入居者以外の貸駐車場で場所が明確に区分されている場合

駐車場契約者の中にその共同住宅の入居者以外の方がいる場合には、その駐車場部分だけを自用地として評価をする。


・貸家建付地評価 アパート300㎡+駐車場200㎡×3台/4台=450㎡
・自用地評価   駐車場200㎡×1台/4台=50㎡

4.具体的な条件

オーナーが入居者と直接契約して賃貸する場合には、裁決事例のように、共同住宅の敷地部分と駐車場部分を一体で貸家建付地評価とするためには、下記のすべての要件を満たす必要があります。

  1. 1.地形要件・・・・貸家の敷地内に併設された駐車場であること
    2.契約要件・・・・駐車場の契約者のすべてが貸家の入居者であること
    3.入居者要件・・・入居者専用駐車場として入居者のみの利用であること
  2. 1.地形要件
     上記図面のように貸駐車場が賃貸共同住宅と隣接していて道路を隔てているなどがない物理的一体性があること。
    2.契約要件
     建物の賃貸借契約と駐車場の賃貸借契約が一つの契約書で締結されていること。
     ただし、別々の契約書であっても駐車場の契約者及び利用者がすべて賃貸共同住宅の賃借人であるなど駐車場の貸付と賃貸共同住宅とが一体と認められる場合。
    3.募集要件
     貸駐車場の利用者は賃貸共同住宅の入居者専用であること。
参考 「相続税贈与税 土地評価の実務」に収録された質疑応答

<質疑>貸ビル用の駐車場敷地の評価

(問)同一人が所有する貸ビル(マンション)とその敷地内に駐車場があり、駐車場の利用者はすべてビルの貸借人です。
また、賃貸借契約は、ビルの各室について賃借人と締結するほかに、駐車場についても月ごとに使用料をとっています。
この場合、貸ビルの敷地及び駐車場については、どのように評価しますか。

(答)駐車場として利用している土地は、原則として、自用地として評価します。ただし、問の場合について、貸ビルの契約と駐車場の利用契約とが別々に締結されているとしても、駐車場の契約者及び利用者がすべて貸ビルの賃借人であり、かつ、ビルの敷地内の駐車場であるなど、駐車場の貸付けの状況がビルの賃貸借と一体と認められる場合には、利用の単位を同一とみて全体を貸家建付地として評価して差し支えないものと考えられます。

<参考文献:笹岡宏保 「賃貸マンションに隣接して入居者専用駐車場が存する場合の評価単位(貸家建付地評価の可否判断)と広大地評価の判定単位が争点とされた事例(中)」税理・2010.12>

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