【事例】
同族法人A社は、父の相続税評価額1億円の土地に10年前より、建物を建てて、アパートとして賃貸しています。この地域は、借地権の慣行があり、借地権割合は60%の地域ですが、「土地の無償返還に関する届出書」は提出していません。
父親に相続が発生した場合、この土地の評価時に、借地権部分を控除して評価できるのでしょうか。
また、地代を支払っていた場合と地代の支払いがなかった場合で取り扱いは違いますか。

【回答】
父親の土地の評価にあたっては、A社に受贈益課税がなされているかどうかは無関係です。土地の評価額は借地権価額を控除して、1億円×(1-60%)=4,000万円となります。
また、地代の支払いの有無で取扱いが違うということはありません。

1.解説

「土地の無償返還に関する届出書」を出し忘れた場合、貸主、借主ともに個人である場合とどちらかが法人である場合とで取扱いが異なっています。

借地権の慣行のある地域において個人が法人に土地を無償で貸した場合、貸付した時点で借地権が法人に移転しますから、法人は借地権価額を受贈益に計上し、課税されることになります。
この受贈益課税を避けるために「土地無償返還に関する届出書」というものがあります。
「土地の無償返還に関する届出書」を提出しないケースでは、地主の相続にあたって、土地の評価額は法人に移転した借地権を差し引いた底地の価額で評価することになります。
「借地権の移転による受贈益を計上していないので、借地権は法人に移転していない」。
と考えて更地評価すると考えがちですが、本来課税されるべきであった受贈益課税がなされていない場合でも借地権は法人に移転しています。
したがって、地主の相続にあたってはその土地の評価額は借地権価額を差し引いた底地価額となります。

2.土地の無償返還に関する届出書の提出が有り、地代の支払いがある場合


図1の場合、個人と法人間には、土地賃貸借契約が結ばれていることになります。
この場合の、土地の評価額は、20%の評価減、つまり、更地評価額の80%になります。
ただし、地代の支払いが安すぎると、20%の評価減が受けられない可能性があるため、地代は固定資産税・都市計画税の3倍以上にするのが、望ましいと考えられます。

3.土地の無償返還に関する届出書の提出が有り、地代のやり取りが無い場合


図2の場合、個人と法人間には、土地使用貸借契約が結ばれて「土地の無償返還に関する届出書」が提出されていることになります。この場合は、土地の評価額は、更地評価額になります。

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