<現状>

1. 現状のままでの相続開始の場合

相続人は長男と二男の2人となります。 献身的な介護をした嫁には相続権がありませんから財産は相続できません。 また、長男と二男の法定相続分は2分の1ですが、長男の嫁が義父の介護を献身的にしても、現在の民法では長男の寄与分は、ほとんど認められないので、長男の相続分はあまり増えないようです。これは、裁判官は、子供や子供嫁が親の面倒を見るのは子供として当然の義務と考えているからです。

2. 長男が先に亡くなった場合

父より先に長男が亡くなった場合には、父の長男から長男の子供(A・B)に相続権は移動しますが、嫁には相続権がありませんので、財産は貰えないという問題が発生します。孫は嫁から見れば子供ですが、子供には子供の生活がありますから、母親の思うようにならないものです。夫が亡くなった後の配偶者(嫁)の老後を考えた場合には、大きな問題です。このままでは、義父の介護をした嫁は文字通り、ただ働きになってしまいます。

3. 考えられる対策案

(1).遺言書を作成する

献身的に介護をした嫁に財産の一部を与える旨の遺言書を作成する。二男には遺留分がありますので、遺留分侵せませんが、公正証書遺言であれば、義父の意思で遺贈したことが明確ですから、嫁の献身的な貢献には応えられます。なお、嫁には相続権がありませんので、遺贈となり相続税は20%加算されます。

(2).生前贈与をする

<暦年贈与>

贈与税は相続税より財産が多額であると税率が高いので、多くの財産を一度には渡せませんが、長時間をかけて毎年少しずつ贈与すれば高い効果が期待できます。しかし、長男が父親より先に亡くなるかも知れないような病弱な場合には、長時間かける時間がないので上記2の場合と同様に長男が財産を貰えないので、嫁に財産を渡すのには、間に合わないと考えられます。

<相続時精算課税>

嫁には相続時精算課税での贈与はできませんが、長男が先に亡くなるかも知れないような場合では、長男に父親から生前に相続時精算課税制度での財産を贈与されれば、贈与された財産は長男の財産になります。その結果、長男が先に亡くなっても、嫁は長男の財産については、相続権がありますので、財産を相続できます。もし、長男が遺言書で多くの財産を妻に相続させると記載していれば、遺留分の問題はありますが、より多くの財産の相続が可能となります。

<実行したこと>

長男が病弱のような時は、長男が父親より先に亡くなる場合がありますから、そのような状況には相続時精算課税での贈与も検討事項にすれば、配偶者の貢献にこたえることが可能です。なお、相続と違い相続時精算課税も贈与ですから、不動産取得税が相続であれば、非課税ですが、贈与であれば例えば、宅地の場合には、固定資産税評価額の1/2の3%が課税され、登録免許税も相続時であれば、0.4%です。贈与時には2%と多額に課税されます。付随費用も考えて、採用時にはコストにも注意をしてください。

(3).養子縁組をする

長男の嫁を養女にすれば、相続権がありますから、当然の権利者として相続財産が相続できます。養子縁組の手続は、結婚届出と同程度で簡単ですから、最近では介護をした嫁の労に応えるため、養子縁組するケースが増えています。また、相続税課税では、孫養子への相続は相続税が20%加算されるのに対して、養子縁組後の長男の嫁には、20%加算はありません。

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