「令和2年度税制改正大綱」が発表され、消費税還付につきましては、今回の税制改正により、居住用建物の消費税還付が完全に封じ込められることになりました。

1.従来の消費税還付スキームとは?

住宅として貸し付けを行う場合、そこから得る家賃収入は非課税売上げであり、建物を取得した場合には、非課税売上対応となるため、仕入税額控除を適用することができません。 しかし、住宅の家賃収入以外に、例えば、金地金の売却をすることにより、課税売上を発生させ、仕入税額控除を、建物の全額あるいは一部について適用を受けることができていました。つまり、①課税売上高が5億円以下で、課税売上割合が95%以上の場合には、全額控除。②一括比例配分方式では、課税売上割合だけ控除ができました。

例えば、居住用建物の完成した課税期間に、住宅の家賃収入を発生させず、金地金売却のみであったとしても、消費税を全額還付することができました。その後住宅の家賃収入が発生し、課税売上割合が、著しく変動した場合(「変動率≧50%」、「変動差≧5%」)には、還付された消費税の一部を返還しないといけないのですが、金地金の売買により、課税売上割合を一定水準以上保ち、著しい変動に該当しないようにすることで、還付された消費税の一部を返還しなくてすむという方法が可能でした。

2.改正の内容は?

令和2年度税制改正大綱により、居住用建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除の見直しがあり、住宅の貸し付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で高額特定資産に該当するものの課税仕入れについては、仕入税額控除の適用を認めないこととされました。 これにより、店舗収入や駐車場収入等の課税売上があったとしても、居住用建物の取得等については消費税還付ができないこととなりました。

但し、取得してから3年以内に、住宅の貸し付け以外の貸し付けや、売却した場合には、3年間の実績に応じて仕入税額控除を受けることができます。

■改正のイメージ


3.適用時期はいつからか

適用時期については令和2年10月1日以後に仕入れを行った居住用賃貸建物についてから適用になります。ただし、令和2年3月31日までに締結した契約による仕入れについては適用しないこととされています。

例えば、令和2年12月に完成し引き渡しを受けた居住用建物ですと、原則は、仕入税額控除を適用することができませんが、工事請負契約を令和2年3月31日までにしていれば、仕入税額控除をすることができるため、消費税還付をできる可能性があります。



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