1.改正前の制度

これまでも、夫婦間で居住用不動産を贈与した場合には税法上の恩恵がありました。 婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅の不動産の贈与、または新たに自宅を購入するための資金については贈与税の基礎控除額110万円に加えて2,000万円までは一定の要件をみたせば贈与税はかかりませんでした。

この制度を利用して夫から妻へ自宅を贈与した場合、夫が先に亡くなっても残された妻の生活基盤は確保できたように思われます。 しかし民法上の制度では自宅の不動産は「特別受益」として相続財産に持ち戻しが必要でした。

☆改正前は配偶者に贈与・遺贈された不動産は特別受益とされ相続財産へ加算


生前に贈与した分も相続財産としてみなす必要があるので配偶者の遺産分割における取得額は1億円×1/2=5,000万円となります。

2.見直しのポイント ~ 特別受益の持ち戻しの免除(民法903条4項)~



☆改正後は配偶者に贈与遺贈された不動産は、相続財産へ加算しない

3.制度導入のメリット

  • 特別受益を受けたものとして、取り扱わなくてよい(持ち戻しの免除の意思表示)。
  • 配偶者の長年にわたる貢献に報い、老後の生活保障になる。
  • 遺贈や贈与の趣旨を尊重した遺産の分割が可能。
同じ事例において、生前贈与分について相続財産とみなす必要がなくなる結果、配偶者の遺産分割における取得額は、 8,000万円×1/2=4,000万円となり、最終的な取得額は4,000万円+2,000万円=6,000万円となり、最終的に贈与がなかったとして扱われる場合に行う遺産分割より多くの財産を取得できるようになります。

4.特別受益の持ち戻しの免除の限界・・遺留分の計算

  • 遺産分割では、相続財産には加算されませんが、遺留分の計算では免除されず、加算されます。
  • ただし贈与が相続開始より10年前であれば加算されません。

5.税務の取扱いとの違い

  1. あくまでも居住用不動産が対象で、居住用不動産を購入するための取得資金の贈与は民法の対象外です。
  2. 生前贈与だけでなく、民法では遺贈の場合にも適用があります。
  3. 税法では、金額の上限(2,000万円)がありますが、民法はありません。
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