1.保険契約者と保険料負担者は区別して考える

生命保険に関しては、「保険契約者」、「保険料負担者」、「被保険者」、「保険金受取人」の登場人物がいます。
登場人物のどの立場に誰がなるかで、税金の課税のされ方が変わってきます。

ケース① 「保険契約者」が父、「保険料負担者」が父、「被保険者」が子、「保険金受取人」が父の場合

このような生命保険では、被保険者が子ですから、父が死亡しても死亡保険金は支給されません(子が父より先に亡くなった場合には、死亡保険金がおります)。保険事故が起きた場合の保険金はもちろん、解約返戻金や満期保険金を受け取る権利は保険契約者・保険料負担者である父にあります。したがって父が亡くなった場合は、保険契約の権利は子に相続されますので、相続開始日の保険金の解約返戻金が「生命保険契約に関する権利」として相続財産となります。

ケース② 「保険契約者」が子、「保険料負担者」が父、「被保険者」が子、「保険金受取人」が父の場合

上記①では保険金を受け取る権利は保険契約者・保険料負担者になると説明をしましたが、このケースのように、子が保険契約者になっていて、実際に保険料を負担したのは父という場合は、保険金を受け取る権利は保険料負担者にあると扱われます。つまり、保険金を受け取る権利は父にありますので、父が亡くなった場合は、この保険金を受け取る権利=「生命保険契約に関する権利」は、相続財産となります。
つまり、①と②の税務の取り扱いは、同じになります。

2.生命保険契約に関する権利の相続税評価額

生命保険契約に関する権利は、あくまでも保険金を受け取る権利であって、実際に死亡保険金を受け取るわけではありません。相続税の評価額は、被相続人が亡くなった日を保険解約日とした場合の解約返戻金の金額をもって、評価額とします。この解約返戻金の額については、加入している保険会社に照会をして確認をします。

3.生命保険金等の非課税との関係

生命保険契約に関する権利は、相続税の課税対象ですが、あくまでも保険金を受け取る権利ですので、いわゆる500万円×法定相続人の数まで非課税とされる生命保険金として扱うことはできません。

4.契約書の名義変更で贈与税は課税されるのか

例えば、保険契約を締結した際には、ケース①同様、「保険契約者」が父、「保険料負担者」が父、「被保険者」が子、「保険金受取人」が父だったとします。
この契約の途中で父が保険契約者、保険金受取人を子に変更したとします。この場合に、贈与税が課税されるかというと、贈与税は課税されません。
では、いつの時点で課税がされるかというと、父の相続の時になります。
このケースで、父が3年間保険料を負担した後、子が保険契約者として保険料を7年間支払ったとします。
つまり保険契約締結から10年の時点で父が亡くなったとします。
この父の死亡時点での解約返戻金が500万円だとすると、このうち父が負担した部分が相続財産となりますので、その割合を乗じた150万円が「生命保険契約に関する権利」として相続税の課税の対象となります。
計算式 500万円×3年/10年=150万円

5.税務調査で発覚することが多い

上記のように被相続人の生前に契約者等を変更してしまっているので、すでに保険の契約者は相続人名義であり、相続税の課税がされないと思っていらっしゃる方が多いです。そのため、隠している訳ではないのですが、結果的に相続税の申告から漏れてしまうケースが多いです。

税務署が、このような名義変更をされた保険契約についてなぜ捕捉できているかというと、平成30年1月1日以降に契約者変更があったものについては、生命保険会社は、「保険契約者等の異動に関する調書」というものを税務署に提出することになりました。
この調書をもとに税務署は相続税の課税漏れがないか、確認をしているということになります。



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