1.妻のへそくりは夫からの贈与?


ご家庭の生活費をどのように管理していますか。夫が生活費を負担していても、妻名義の口座で管理していることもあるでしょう。この場合、もともとは夫のカネですが、余った生活費が妻の「へそくり」として積みあがっていくことになります。

このようなへそくりをどう取り扱えばよいのでしょうか。専門家の中でも「へそくりは名義預金なので、相続の際に税務調査で指摘される可能性がある。夫の口座に戻すべき」と言う人がいれば、「毎年110万円の増え方であれば、夫から妻への贈与と考えることができる。夫の口座に戻さなくてよい」という人もいます。

夫の相続の際に、へそくりは自身の財産であるとの妻の主張に対し、税務署は夫の財産であるとしたため、国税不服審判所で争ったケースがありますのでご紹介します(平成19年4月11日裁決)。

2.妻の主張


妻がへそくりを自身の財産であると主張する根拠は次のようなものです。
1.へそくりは生活費として生前に贈与されたものを数十年間にわたり蓄積したものである。
2.贈与契約書はないが、口頭での贈与契約があった。夫婦間で契約書を作成する社会慣行は我が国にはないのだから、書面がないのは当然である。
3.生活費が入金されていた預金通帳と印鑑は妻が管理・保有していたことからも実質的な所有者は妻である。

3.国税不服審判所の判断


妻の主張に対し、審判所は以下の判断を示しました。

1.生活費は夫婦共同の資金であるが、夫から「渡した生活費の使い残しは妻にやる、好きにしてよい」と言われたとしても、それがただちに贈与契約を意味するとはいえない。
2.生活費のうち残ったお金が、贈与されたことを具体的に明らかにする客観的証拠がない。書面がないことを夫婦間では当然であると主張するが、書面がないことが口頭での贈与契約があったことを証明するわけではない。
3.妻へ生活費で残ったお金を贈与したことを認めるに足る証拠は見当たらないことから、へそくりは夫の相続財産とすべきである。

4.おわりに


上記の通り、へそくりを夫の相続財産と判断される可能性があります。贈与契約書を作成する、贈与税の申告を行うといった対策が望ましいのですが、へそくりの存在を夫に伝える必要があります。もし、へそくりの存在を夫に伝えたくないということであれば、夫の相続の際に名義預金として申告するようにしてください。

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