相続税申告は全国及び東京国税局管内(東京都・千葉県・神奈川県・山梨県)でどれ位の件数があったのか、集計したものが下記の表になります。


全国では、令和元年に亡くなった人(被相続人)の8.3%、令和2年が8.8%とほぼ同じ割合ですが、東京国税局では、13.8%と高くなっています。やはり首都圏は人口が多い、地価が高い、経済活動の拠点が多いなどの事から東京国税局管内は課税割合が高い(=申告件数が多い)ことが見て取れます。

また、財産構成がこの10年間で変わってきた事も注目すべき箇所です。下記のグラフをご覧いただくと、相続財産内訳で土地割合が平成23年の49.2%から令和2年には38.2%に減少し、現預金割合が逆に23.7%から31.4%に増加していることが分かります。つまり、最も財産として漏れやすく把握しづらい現預金が増えてきた事が傾向として見られます。



【相続税の申告と税務調査の状況】

当該記事によると、「相続税の税務調査は資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告であると想定される事案等について実施調査を実施したと記載されています。新型コロナウィルス感染症対策の影響により実地調査件数は令和元年に比べ大幅に減少したが、大口・悪質な不正が見込まれる事案を優先して調査した結果、1件あたりの追徴税額943万円になり過去10年で最高額となった」との事でした。

注目されることは、税務調査で申告の誤りがあった非違割合が令和元年が85.3%、令和2年が87.6%と非常に高いことです。つまり、相続税の税務調査になると、ほとんどの人が追徴課税されていることです。この原因として、相続人の経験不足と申告を担当する税理士の知識不足があると考えられます。いずれにしても、相続税の申告では、税務調査に入られないため適正な申告をすることの大切さが分かります。

さて、ここまで記事を読んでどのくらいの方が当事者意識をお持ちになったでしょうか。
相続税と聞くといわゆる資産家(財産数億以上)をイメージされる方が多いと思いますが、意外と相続税は身近な税金になりつつあると言えます。それを示すのが下記の表になります。


課税価格5,000万円超~3億円までの階層で税務調査が5,709件と最も多く行われていることが分かります。また、申告漏れの割合は、5,000万円~1億円までの階層が90.40%と最も高い割合です。財産5,000万円だと都内にマンション+現預金・有価証券・生命保険等で届く可能性がありますので、相続税申告案件は増えていく傾向にあると言えます。

【適正な相続税申告とは】

それでは、相続税申告の資料情報等で調査を受けない資料とは、どのような資料をいうのでしょうか。税理士によって様々なアプローチがあると思いますが、国税庁のチェックシートだけでなく「経験・ノウハウを生かした独自のチェックシートの活用」、「33条の2の書面添付制度の活用」「相続税申告書と合わせて税務署に提出する添付書類の充実」といった事が考えられます。また、申告書作成に際し、財産形成の経緯や預金の流れ、保険契約一覧作成、相続人へのヒアリング等、細かく情報を積み重ねる事は言うまでもありません。情報化社会の中で簡素化・効率化が注目されがちですが、相続税申告は丁寧な資料作りこそがお客様からも税務署からも最も信頼を得る手法ではないかと思います。

※今回の記事に掲載している各資料は「令和2事務年度における相続税の調査等の状況」をはじめ、国税庁で出典されているものを掲載しております。

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